明快書評 by フクロウとキリギリス

月曜日, 11月 06, 2006

書評:壊れた脳 生存する知


 三度脳出血に倒れ高次脳機能障害を発症した整形外科医であった著者の記録である。脳の高次な機能に障害を受け、空間の認識が困難になったり、記憶や言語に障害が生じたが、本人の努力、家族や周囲の助けにより、子供を育て医師として働く様子が描かれている。全体を通して医師としての冷静な観察、ユーモア、周囲に対する感謝の気持ちで貫かれている。高次脳機能障害は痴呆ではない、繊細な感受性と知性は残っているのだということを世の中の人に知ってほしいというメッセージが伝わってくる。このようなハンディを負いながら前向きに生きている著者をうらやましくさえ思う。今やっと9歳になったばかりの息子さんとの関係もあたたかい気持ちになる。元気をくれる本である。知人で脳出血に倒れた人にこの本を差し上げたので、最近2冊目を購入した。私の「何度も読み返すだろう図書館」に所蔵してある。題名:壊れた脳 生存する知,著者:山田規畝子,出版社:講談社,発行:2004年,価格:1600円