明快書評 by フクロウとキリギリス

月曜日, 11月 06, 2006

書評:ローラ、叫んでごらん


両親に虐げられて、人間を恐れ、口のきけない生きるしかばねとなった少女ローラが人間としてよみがえるまでの精神科医とキリスト教系施設のシスターたちの努力の実話です。著者はこの精神科医で、5年にわたり無償で治療に当たり、ローラが社会に船出するまでを記録したものです。ローラがはじめて口をきいたときの感動を是非味わってください。幼児虐待の原因が、両親もその親とのかかわりがうまくいかなかったという事実であり、悪循環になっています。この循環を断つことが将来生まれてくる子供を多く救ううことになります。一人の医師が5年かけてたった一人の患者を治療したということの意義がよく理解できます。この本は1973年にサイマル出版会から出版されたとき100万部を売るベストセラーになったもので、私が何回か読み直した数少ない本です。
題名:ローラ叫んでごらん,著者:リチャード・ダンブロジオ,出版社:サイマル出版,発行:1973年,価格:750円
現在は講談社から文庫で発売されています。